『100回泣くこと』中村航



上手いことを言おうとすればするほど、言えなくなる。そんでもって、言おうとする気持ちがしぼんでいってしまう。

買ったばかりのノートの初めのページに書くことと、「ちゃんとした読書記録をブログ形式でまとめよう」ということは全くもって同じ気持ちなんだなと思う。

でも、こうやって画面に向かっていると、堰き止められていたものがぽつぽつとだらだらと溢れて、自然と書けるように、面と向ってみれば案外なんとかなるもんなのかもしれない。


私は、更新していない間何冊か読んだし、ブログを書こうとしたけれど、他の娯楽に時間を使ってしまって、更新には至らなかった。

他の娯楽に時間を使うこと自体は悪いことではないと思うけどね。


実際、1年前位前だったか、全く本を読まない1ヶ月があった。
リハビリのつもりで、語り口が優しい『100回泣くこと』中村航著 は、通学中の電車で読了したのだけど、涙が、もう本当に止まらなくて、鼻水も出てきて、なんとか解説を読んで心を落ち着かせた記憶がある。

今でも大好きな本で、ついこの間も読み返したところだ。
なんというか、中村航作品の登場人物はいつでも思いやりを持っていて、健やかな呼吸をしていそうな、少しいたずら、つまり人間の温かさみたいなものを感じることが出来ると思う。

いつだって、優しい。

結婚の練習をしに「嫁に来たよ。」とドアを開ける彼女。ベランダでお互いの髪にライスをかけ合う二人。美味しい紅茶を淹れてケーキ入刀をする二人。スケッチブックに誓いの言葉を書いて、音読する二人。それを、「いい。一年に一回くらいは読んでほしいくらいいい。」と言って気に入った彼女。


中村航さんにしか書けない世界だなあ、と素直に思う。

二人にしかわからない言葉を、二人で作って、二人だけで使って、笑い合う。恋人ってこういうことする人たちのことを指すのかもしれない。


もし、私が近代文学を専攻していて卒論もそれで書くならば、「なぜ女性が死ぬのか」云々という題で、『愛と死』『風立ちぬ』『野菊の墓』『春は馬車に乗って』を取り上げて、『ノルウェイの森』『世界の中心で、愛をさけぶ』そしてこの『100回泣くこと』に共通点を探ると思う。

残念ながら(?)、私は平安後期文学を専攻しているために卒論を書くことは叶わないが、自分なりの考察を進められたらなと思う。

まあ、あんまり難しく考えずに、フィーリングを大事にしながらなにか見えてくるものがあればいいな程度です。



では、また近いうち更新します。おやすみなさい。