吐露



家族のなかの一人、学校のなかの一人、社会のなかの一人、その事実だけで息苦しくてたまらないときがある。

生きるということは、時を重ねるということであり、時というのは戻せないものである。

私は、私の両親の元に生まれてから、もうすぐ二十二年経つ。
就職先も決まった。来年の春、卒業する。

この事実が苦しい。
周りの人たちが大好きで、同じくらい苦手。たまに、自分というものがわからなくなるときがあって、人にどう接すればいいのかわからなくて、ただ、空間に漂っている感じがする。


今、やりたいと思っていることに挑戦せずにいつ挑戦するのかと聞かれれば本当に情けなくて泣けてくる。
理想と現実は乖離しており、理想を叶えられるほどの力量もないと自覚している情けなさ。

自分に甘く、また楽しいことに目移りがちな私は、いつの間にか取り返しがつかなくなり、妥協の人生のレールの上を走るのみとなる。

なにが大事か。挑戦する心、やわらかくて脆く薄く色のついた心、実行力、周りの手助け、挙げればキリがない。

なにが大事か。家族、恋人。世間体。
そんなもの、と人は笑うかもしれないけれど、どうしてもどちらも大事なのです。

両立できたときこそ、私の幸せであり、また今現在の時点で両立できないレールを走る予定だからこそこんなに吐きそうなのかもしれない。

就活は後悔の連続であり、自分の情けなさや甘さを改めて実感した。

しかしながら、褒められるところは褒めてあげたい。少なからず自分を認めたい。

私の人生には、いつも誰かがいる。

『100回泣くこと』中村航



上手いことを言おうとすればするほど、言えなくなる。そんでもって、言おうとする気持ちがしぼんでいってしまう。

買ったばかりのノートの初めのページに書くことと、「ちゃんとした読書記録をブログ形式でまとめよう」ということは全くもって同じ気持ちなんだなと思う。

でも、こうやって画面に向かっていると、堰き止められていたものがぽつぽつとだらだらと溢れて、自然と書けるように、面と向ってみれば案外なんとかなるもんなのかもしれない。


私は、更新していない間何冊か読んだし、ブログを書こうとしたけれど、他の娯楽に時間を使ってしまって、更新には至らなかった。

他の娯楽に時間を使うこと自体は悪いことではないと思うけどね。


実際、1年前位前だったか、全く本を読まない1ヶ月があった。
リハビリのつもりで、語り口が優しい『100回泣くこと』中村航著 は、通学中の電車で読了したのだけど、涙が、もう本当に止まらなくて、鼻水も出てきて、なんとか解説を読んで心を落ち着かせた記憶がある。

今でも大好きな本で、ついこの間も読み返したところだ。
なんというか、中村航作品の登場人物はいつでも思いやりを持っていて、健やかな呼吸をしていそうな、少しいたずら、つまり人間の温かさみたいなものを感じることが出来ると思う。

いつだって、優しい。

結婚の練習をしに「嫁に来たよ。」とドアを開ける彼女。ベランダでお互いの髪にライスをかけ合う二人。美味しい紅茶を淹れてケーキ入刀をする二人。スケッチブックに誓いの言葉を書いて、音読する二人。それを、「いい。一年に一回くらいは読んでほしいくらいいい。」と言って気に入った彼女。


中村航さんにしか書けない世界だなあ、と素直に思う。

二人にしかわからない言葉を、二人で作って、二人だけで使って、笑い合う。恋人ってこういうことする人たちのことを指すのかもしれない。


もし、私が近代文学を専攻していて卒論もそれで書くならば、「なぜ女性が死ぬのか」云々という題で、『愛と死』『風立ちぬ』『野菊の墓』『春は馬車に乗って』を取り上げて、『ノルウェイの森』『世界の中心で、愛をさけぶ』そしてこの『100回泣くこと』に共通点を探ると思う。

残念ながら(?)、私は平安後期文学を専攻しているために卒論を書くことは叶わないが、自分なりの考察を進められたらなと思う。

まあ、あんまり難しく考えずに、フィーリングを大事にしながらなにか見えてくるものがあればいいな程度です。



では、また近いうち更新します。おやすみなさい。



『恋読』小橋めぐみ


なんだこの生ぬるい風、
なんだこの気持ち良いお日様。幸せすぎるぞ。



15時くらいに人と会う約束をしていて、
その時間に着くには13時くらいの地下鉄に乗らねばならなくて…
一番気持ちの良い時間を、暗くて息の詰まりそうな地下鉄に乗るのがどうしても嫌で、待ち合わせを18時過ぎにしてもらった。

その人に、正直に話したら「イェイ」と返ってきた。ゆるい。



こんな優しい気持ちの日は、優しい本が読みたい。
お世話になっている大学の司書課程のK先生がおすすめされていた、『恋読』小橋めぐみ の続きを読もうと思う。
久しぶりに、新宿の紀伊国屋書店で買った新品の本。いつもはお金がなくてブックオフで中古の本を買うので、まだ誰の手にも渡ったことがない本を読むのはすごく久しぶりだ。


K先生は、とっても素敵な考えをお持ちの先生で、「本にはストーリーが書いてある。でもそれだけじゃなくて、その本がどんな人が手にとったかどんな風に読まれたか、というように、本自体にもストーリーが付くんだよね。」と話されていました。

いわば、いま私のかばんの中にある『恋読』は、わたしが初めての読者かつストーリーを始める人なわけですね。わあわあ。

大切に、大切に、読みたい。



自分が好きだと思う人が好きな本っていいですよね。
そのおすすめしてくれた人が読んでいる姿を想像しながら、読む。なんだかあったかい気持ちになります。

ちなみに、自己啓発系は苦手であまり読まない。自分で言うのもなんだけど、私はすごく影響されやすいから、そういうのを読むと心がグラつくのです。あと、少し胡散臭く感じてしまうから、なんか最後まで読めない。
いつか、そういうものに助けられるときがくるかもしれないから、毛嫌いはしないでおくけど。


では、出かける準備します。



ハッピーバレンタイン!

新潮読書クラブ 『痴人の愛』を石田衣良さんと読む



こんにちは。初めまして。起きていますか。

21歳女子大生。本が好き。
人は好きだけど、友達を数でいえば極少ない。いつのまにか妄想してる。そしてそれをSNSに垂れ流してはなんともいえない満足感を得て安心して眠りにつく人。
高校のときにお付き合いしていた男の子には「昔と今のイメージが違う。根は良い人かもしれないけど、表面が糞だよね。」とバッサリ言われた経験がある。
今日は、バイトに寝坊して遅刻しました。

簡単ではありますが、自己紹介は以上です。



ブログを書こう書こう作ろう作ろうと思っているうちに何日か過ぎてしまった。
ツイッターは約4年と、細く長く続けているものの、タイムライン同様、私の頭のなかからもすぐに流れていってしまうような気がして、ブログを作ることに。
文字数やファボ数を気にしないで、文章を書くのは久々でありまして、今、ラベンダー色のぬるくなった湯船に浸かりながら、今日のことを思い返しているうちに、「あ…、書こ。」と思い起こし、遂に行動。


今日は、新潮社主催の読書会に参加してきた。ときの作家と共に名作を読む、という趣旨のもと、今回は、石田衣良さんと『痴人の愛谷崎潤一郎著 を読む。

会場は、新潮社に隣接されている、ラカグという倉庫を改築した建物の二階。
一面ではないが、上品なガラス張りで風通しの良さというか、すっかり暗くなった空の静けさや、人の呼吸を感じることが出来て、雰囲気の良い場所であった。あと駅からもの凄く近い。


さて、約1時間半、イラ節を聞いてきたのだけど、シンプルに言って、とても楽しかった。

トークの随所に見られる大人の余裕というか深み?お茶目な感じが、石田さんの魅力だと思うし、引き込まれた。

色気と教養は比例すると思う。本来、人間は、多くの異性を獲得するために勉強や読書といった教養を身につけるのかなあ、とこじつけたくなる。本能だしね。
まあ尤もいくら教養をつけようと、気の利いた話し方が出来なければ軽い本末転倒を起こすのだけど。 

序盤に、石田さんが「不景気なときには、お金もないしじっくり本でも読むのが良いですね〜」とおっしゃっていて、「(そうだ、そうだ!)」と頷く。

谷崎潤一郎というのは、作家としてはエリートコースを歩んだマゾで変態なおじさんである。
「女性にかしづかれたい、女性を仰ぎ見たい」と、女性を崇高しずぎて女神化させる一方で、その女神になにかが足りないと感じるや否や習い事をさせたり言葉を荒げたりする。
痴人の愛』の譲治も、ナオミに対してこのような態度とってますよね。
教養 = 色気 説が濃厚になってきた気がする。
石田さんは、「圧倒的に貴族な考えであるが、女性の下にかしづくことを楽しみたい。」と。
まさに、これが「性癖」というものなのでしょうね。普段の顔からは想像も出来ない面が現れるからこそ、「性癖」。大谷崎と呼ばれている人だけど、どこまでも男性だったんだなあ、と。

当時、自然主義が主流であり、関東大震災の翌年に発行された『痴人の愛』。
日本中が震撼しているときに、ありのままマゾな性癖を曝け出す。そんでもって文章が天才的にうまい。最高です。


うちのゼミのおじいちゃん先生がよく、「古典から恋愛術や男女の気持ちを学んで、今後に活かせ!」とおっしゃるのですが、石田さんもそんなようなことおっしゃっていた。
私は中学生のときに覚えた百人一首で、「今も昔も全く変わらないじゃん!」と気がついてから、古典も小説もぐ〜んっと面白く感じるようになったような気がする。
やっぱり、昔の人も今の人も、人間的に通ずるものが多いんだな、恋愛って。(千葉県・21歳・女性)


初記事、ということで気合いいれたわけでもなく、一重にイベントが楽しかったので、わりと長くなってしまったので、ここらで寝ようと思います。


まとめとして、
「堂々とした変態は強い( = 立派でなければ、という思いは人を滅ぼす) 」
という石田さんの言葉をお借りして、締めます。

おやすみなさい。